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仕置き館

【仕置き館現代版】機械仕掛けのお仕置き

 ←短編集【習慣】のこと。 →機械仕掛けのお仕置き(仕置き館現代版)のこと。 
 中世、娼婦の更生施設として歴史を開始した、通称「仕置き館」は、形を変えながら、現代も存続していた。
 売春だけでなく、怠惰な世相を反映した収容理由にも適応するようになり、それに伴って、収容者数は激増する。
 それを可能にしたのは、オートメーションの導入であった。
 収容者の生活・健康管理は管理者不足を補い、効率を上げたのだ。
 だが、収容者の昔ながらの厳格で規律正しい生活は変わらない。贅沢に慣れた現代の婦女子には、それだけで辛く思える質素な生活の中、再教育が行われていた。
 そして、ここに収容された時点で、彼女らはお尻への戒めを課せられる身であるということも、昔と変わらないことの一つであった。


 仕置き館では、戒めに恐怖を感じることもまた、お仕置きの一環とされた。
 昔から、複数を集めてお仕置きを執行することも多いのは、その為だ。
 目の前で他者のお仕置きを見せつけられ、それが必ず自分のお尻にも巡ってくる運命であることに、慄き、後悔させ、反省させる。
 ただただ痛みを与えるより、余程効果的な方法であった為、それは脈々と受け継がれている。
 お仕置き自体にも導入されたオートメーション化により、その精神的厳しさが増すのに一役買っていた。


 婦女子更生施設、通称、仕置き館は、警察のシステムと連動していた。
 家出娘の捜索願のデータ。
 あるいは、風俗嬢のデータ。
 度重なる補導歴のある少女のデータ。
 書類送検のみで軽犯罪に類するデータ。
 そうした躾の見直しが必要とされた婦女子を、未成年者であれば、親の同意書を経て、連れてくるのである。



 沙耶(さや)は高校1年であった。
 最近、親との衝突が頻繁で、とにかく家がうっとおしい。
 今日も携帯料金の使い過ぎを咎められ、危うく携帯電話を取り上げられそうになって、大喧嘩。
 もう帰ってやるものかと、繁華街をふらついているところだった。
 寝泊まりする場所には困らない。
 ネットカフェならお小遣いで十分足りるし、カレシの家に泊まることだってできる。
「えー、なんでぇ? なんで泊まりにいっちゃいけないのよ」
 電話越しでしどろもどろだったカレが、次第に怒ったような口調になり始めた頃、沙耶の耳に、女の声が飛び込んできた。
「~~~サイテー!」
 電話を切って、ムカムカしながらネットカフェを目指した。
 
 
 沙耶がその車に乗せられたのは、いい加減、ネットカフェでの寝泊まりにうんざりしていた3日目だった。
 ドリンクを取りに行った時、数人の男が沙耶を取り囲み、何事かと慌てる店員に、彼らは「家出人補導官」だと名乗った。
 店員は「家出人補導官」という言葉を初めて聞いたが、見るからに未成年の沙耶を長々延長滞在させていたことを糾弾されてもかなわないし、なにより、面倒に関わりたくなかったので、何事もなかったかのように、持ち場の受付カウンターに戻る。
 沙耶は抵抗したが、止める人間が誰もいない状況では逃げ出すこともかなわず、待機していた車に乗せられるしかなかったのだ。
 警察に連れていかれて、親を呼ばれて・・・、いや、家出と認識されて補導されたのなら、すでに親に連絡がいっていて、警察で待ち構えているかもしれない。
 まあ・・・それだけのことだ。
 またあの鬱陶しい生活に戻るだけ。
 親なんか無視していればいいし、腹が立てば、また家を出ればいい。
 それだけのこと。
 そう思っていたのに・・・。
 事態は沙耶の想像の及ばないことになっていたのだ。
 車がくぐった重厚な門に、沙耶はさすがに違和感を感じた。
 これは警察の建物ではない。
 どちらかと言えば、刑務所のようにも見える。
「ここ、どこよ!?」
「婦女子更生施設、日本支部。通称、仕置き館」
 沙耶の両脇に座ったスーツの男の一人が言った。
「何!? 訳わかんないんだけど!?」
「施設長よりご説明がある」
 更に文句を言おうとしたが、今まで見たことがないようなスーツの男達の醸し出す重々しい雰囲気を前に、閉口するしかなかった。



 車から降ろされて、沙耶が連れていかれたのは、施設長室というところだった。
 そこにいたのが女性で、ほんの少しだけ、ホッとする。
 けれど、この施設長という女性も、厳格な空気を放っている。
「はじめまして、沙耶さん。これから一ヶ月、あなたの生活を管理更生する施設の施設長、及川(おいかわ)です」
「はあ!? 一ヶ月!? 何よ、それ!」
 及川はため息をついて、首を振った。
「訳も分からず連れてこられるから、こんな風なのよ。この子が悪いわけではないわ。政府に強く打診しなさいと、いつも言っているでしょう。この更生施設を公にするようにとね」
 恐縮気味に、スーツの男が頭を下げた。
「はい、出来得る限り、迅速に・・・」
「そうしてちょうだい。・・・ああ、沙耶さん、ごめんなさいね。内輪の話で」
 下手に出られると、激しく言い返しにくい。
「だから・・・何なのよ、一体・・・」
「ここは、怠惰な世相を反映した婦女子を更生する施設です。・・・怠惰って、わかるかしら?」
 わからない。
 言葉にはしなかったが、施設長には沙耶の雰囲気だけでわかるらしい。
「そう。では、世相は?」
 これも、わからない。
「反映」
「それくらいわかるわよ!」
「では、婦女子」
「オタク女。腐女子でしょ。私、オタクじゃないわよ」
 施設長のため息が深くなった。
「わかりました。言い方を変えましょう。ここは、躾けのなっていない女の子を、躾け直す生活をさせる場所です」
「はあ!?」
「親御さんには、警察からこちらに一ヶ月預かる連絡がいっています」
「ばっかじゃないの!? 学校はどうすんのよ!」
「家出で3日も行ってないでしょう。それに、あなたが通う高校のお勉強は、ここで十分賄えます。それなりの管理官を揃えていますからね」
「意味わかんない! 帰る!」
「帰らなかったのは、あなたです」
 それはそうだが、沙耶はいつでも帰れるから帰らなかっただけだ。
 他人から強制的に一ヶ月も帰れない状況にされることなど、想定していなかった。


■機械仕掛けのお仕置き部屋■


 そのマシンがあるフロアは、コンピューターによって選抜された10人が連れてこられ、毎日稼働していた。
 機械仕掛けのお仕置き部屋と呼ばれるこの広めのフロアには、木のお仕置き台が10台が並んでおり、それを一括に操作するコントロール台が一台。
 お仕置き台は一台ずつ差し向う形で配置され、彼女らは、この台にお尻を丸出しにされた格好でうつ伏せにベルトで固定される。
 腰と太ももをベルトで台に拘束されると、お尻は逃げられない。
 木のお仕置き台のには、仕置き板を振り下ろすだけの、至って簡素な作りのお仕置きマシンが両脇に設置されておりマシンがこの仕置き板を左右から振り下ろし、お仕置き台に拘束された彼女らのお尻を叩いていくのだが・・・。
 そのお仕置きマシンを一斉には稼働させず、ランダムに動き出すことが、彼女らの恐怖を一層掻きたてた。
 コントロール台に並ぶスイッチを、監理官が押していく。
 10人の内の誰かが悲鳴を上げだすと、まだマシンが作動していない者たちの慄きも始まる。
 いつ自分のマシンが動き出すのか。
 差し向いに拘束されている為、正面の者のお仕置きが始まると、痛みに歪んでもがき始める顔を見せつけられる。
 横の者が始まると、パーーン! パーーン! と仕置き板が丸出しのお尻を叩いていき、段々赤くなっていくのが見せつけられる。
 コントロール台のスイッチが入る「ヴィー!」という音は、わざと大きくしてある。
 悲鳴の合唱が始まると、スイッチが入れられたのが、収容者に聞こえないからだ。
 そのスイッチが入る音の恐怖も、またお仕置き。
――――いつ。いつ動き出すか・・・。
 その恐怖で、まだ叩かれていない内から泣きだす者もいた。
 

 動き出したマシンが叩く数。
 これもまたランダム。
 数発で止まることもあれば、止めるのを忘れられてしまったかのように、延々仕置き板が降り注ぐことも。
 止まったからといって、終わりではない。
 また、いつ動き出すのかという恐怖が繰り返されるだけのこと。
 マシンの仕置き板は、その強さも一定していなかった。
 時折、管理官が強弱をつけたり、速度を早めたり、逆に遅めたり。
 収容者達を翻弄した。
 止めてと泣き叫ぶ者。
 動かさないでと哀願する者。
 ベルトで拘束されたお尻を、なんとか仕置き板から逃がそうと足掻く者。
 ひたすらヒィヒィと大泣きする者。
 機械仕掛けのお仕置き部屋は、さながら地獄絵図のような様相を呈す。

  
 徐々に、赤いお尻が並びだす。
 機械仕掛けのお仕置き部屋でのお仕置きは、マシン稼働から一時間と決められている。
 上記したように、一時間の間、延々叩かれ続ける訳ではないが、マシンが止まっても、再び動き出すのを待たされる恐怖と周囲の悲鳴が、その一時間のすべてをお仕置きとしていた。


 この機械仕掛けのお仕置き部屋では、もう一つのお仕置きも、同時進行していた。
 吹き吹け天井のフロアは、上部にガラス張りの見学室が設けられており、他の収容者達に、お仕置きの執行を見学させているのだ。
 まだ実際に味わったことがない収容者も、このお仕置きを知っていた。
 あの阿鼻叫喚と、倍ほどに真っ赤に腫れ上がっていく哀れなお尻を目の当たりにした収容者達は、機械仕掛けのお仕置き部屋に恐れおののく。
 そして、機械仕掛けのお仕置き部屋行きへ、自分の名がリストアップされた時から、「恐怖を味わう」というお仕置きが始まるのだ。
「――――何よ・・・、これ・・・」
 沙耶は目を疑うと同時に、お仕置き台に固定された女たちから、目を離せないでいた。
 自分と同じ年の頃の少女もあれば、かなり年長の女性もいる。
 その年齢差はともかく、わんわん泣きじゃくる女を、沙耶は小学生の時以来目にしたのだ。
 その場に初めて居合わせる沙耶には、施設長が付き添っていた。
「このお仕置き部屋だけではありませんよ。ここの生活で順守すべきことを守れなければ、いつでも、お尻を叩かれます」
「何よ、それ!? バカじゃないの!?」
「そう、例えば、そういう言葉遣いもね・・・」
 沙耶は思わずお尻を押さえた。
「明日から、それが始まります。心しておきなさい」
「い、嫌よ! 帰る!」
「言ったでしょう。帰らなかったのは、あなたです」
 施設長の淡々とした言葉を聞いて、沙耶はガラス越しに見えるお仕置き台の上の赤いお尻と泣きじゃくる女たちを改めて見入った。
「やだ・・・、やだぁ・・・、こんなの、やだーーー!」





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