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ラ・ヴィアン・ローズ

第29話【突入】

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     ―1991―

 朱煌が愛機「ティット」で姿を消したという報告が、管制塔よりマジェスティーの元にもたらされたのは、黒荻帰国の一時間前だった。
「何だと!? 何故そんな重要事項が離陸前に私に報告されなかった!」
「姫が日本に行かれることが、本陣すべてに伝達されていたのがネックでしたな」
 苦々しげにクロスが言った。
「煌は・・・やはり日本へ向かったのか」
「恐らくな。そら、米大統領へのホットラインを使用したデータが残っている」
 コンピューターに向かっていたアイフェンが、モニターをマジェスティーに向ける。
「情報関係をすべてシャットアウトしたのが裏目に出たな・・・。日本で何か、自分に関わる事態が発生したと察したか」
 三人の様子に、黒荻は気が気でない。
 だが、とても声をかけられる空気ではないのだ。
「クロス少将、直ちに上層部を本陣に召集せよ」
「Yes sir!」
「ドクター・アイフェン、貴官にはラ・ヴィアン・ローズ軍属として日本に飛んでもらう」
「・・・Yes sir」
 クロスとアイフェンが敬礼を残して去ると、黒荻はとうとう堪りかねて、険しい顔で窓の外を見つめるマジェスティーの前に立った。
「閣下! 朱煌を連れ戻しに行きたいんです。早く私を帰国させてください」 
「間に合わんよ。いくら君でも音速で日本へなど、体が持つまい。アイフェンが今から日本に飛んでも、事件は決着した後だろう。ダルム派民族同盟程度のテログループなら、朱雀は単身でも片を付けられる」
 ・・・ならば、先程の重たい空気は何だったのか。
 何故、緘口令まで布いて、朱煌に新宿署占拠を隠そうとしたのか。
 冷たい汗が、黒荻の背中を伝った。
「・・・では、閣下は何をご懸念です・・・!」
 マジェスティーが唇を噛んだ。
 その彼から聞かされた言葉に、黒荻は声を失い、よろめいた体をやっとソファで支えたのだった。




 紅蓮を手に横須賀米軍基地に降り立った朱煌は、新宿警察署に向かおうとしていた部隊のトラックに、有無を言わせず乗り込んだ。
 大統領とのホットラインで得た情報では、ダルム派民族同盟の要求は昨年末に橘財団がガザン共和国にて行った現地就労者の大量解雇の撤回と、その際に発生した暴動で逮捕された同志の釈放。
 橘に大量解雇をさせたのは、ガザン共和国をテロ支援国家と認定した米国の経済制裁の一環である。
 それ故に米国の対テロ部隊に出動要請が下ったのだ。
 占拠からすでに四日が経過。
人質の心身的限界も近い。
「朱雀閣下!? ラ・ヴィアン・ローズが出動するという報告は受けておりませんが・・・」
「詳しい資料を」
「あの・・・」
「資料を」
 朱煌の静かな声に、部隊長たる中尉は慌てて敬礼し、新宿署占拠のこれまでの経過を記した資料を差し出した。
 トラックに揺られながら、それに目を通す朱煌から、見る見る表情が失われる。
 その様に、同乗する米兵は、これから展開される作戦よりも緊張した。
「朱雀閣下はもともと冷酷非情で名高い指揮官ですが、あれほどまで凍てつく目をなさったのを、初めて見ました。冴え凍るようでいて、その凍る瞳の中に、紅蓮の炎が荒れ狂っているのです。ええ、わからないでしょうね。信じてもらえなくていいんです。あの場にいた者にしか、わかりはしませんよ。およそ人間が浮かべる表情ではなかった。想像しようというのが、無理な話なのです・・・」
 後の占拠事件記録にある、米兵の証言である。
 彼らに恐怖感すら植え付けた朱煌が、この時、資料から見出したのは・・・「羽生瞳子」の名であった。




「隊長、この作戦の全権を、私に委任してはもらえまいか」
 中尉に新宿署前の仮設対策本部到着を告げられて、朱煌がやっと口を開いた。
「それは一向に構いませんが・・・、お顔の色が優れませんよ」
 朱煌は黙って首を横に振って見せ、ゴーグルをかけるとトラックを降りる。
 日本はまだ早朝だというのに、現場は野次馬で埋まり、騒然としていた。
 警官隊、機動隊はもとより、自衛隊も新宿署の周りに配置され、それを各テレビ局のカメラがつぶさにとらえている。
 そこへ米軍の部隊が到着したものだから、いや増す騒がしさ。
 中尉と共に仮設対策本部のテントをくぐった朱煌は、ダルム派民族同盟及び人質の人数、一階フロアのどの辺りに人質が集められているか、現在の人質の健康状態など、予想を上回る詳細な報告を受けた。
「ほう。日本警察もなかなかやるな」
「男性解放時に署内に残ったらしい刑事から、定期的に無線連絡が入るのだよ。そう伝えてくれ」
 朱煌のことを通訳だと思ったらしい対策本部長が言った。
 一応日本語もわかる中尉はヒヤヒヤものだ。
「しかし、橘の女狐ひとりの為に、とんだ大事だな。・・・まあ、一人きりの人質よりは、こちらも動きがとり易いが」
 当の朱煌は本部長の横柄な態度を気にかける様子もなく独りごちる。
 若輩の自分が階級より低く見られるのは、慣れっこなのだ。
 日米、各隊の隊長をテントに集め、朱煌は新宿署(小滝橋仮庁舎)の見取り図を広げた。
「ダルム派民族同盟総数30人は、全員カラシニコフと思しき突撃銃及び自動装填式拳銃を所持とのことだ。それに今までダルム派民族同盟の行ったテロでは、必ず自決用手榴弾を各自が携帯している。今回もそうと見て間違いないだろう」
 通訳だと思っていた朱煌が会議を進める姿に、本部長はようやく自分の見損ないに気付いて冷や汗を拭っている。
「人質54名は一階フロアの奥。その見張りにリーダーを含めた10人。残り20人は我らの突入を阻むのに配置されているとのことだ。我々が人質救出を最優先しなければならないのは、言うまでもないだろう。確実な避難経路確保に、まず我ら米対テロ部隊が突入。突破口として・・・」
 パン・・・と、朱煌が紅蓮で見取り図の一箇所を示した。
「ここに迫撃砲を撃ち込む」
「な・・・! なんですって!?」
 本部長が血相を変えた。
「そんなことをしたら署・・・人質が!」
「このポイントならば人質に影響ない。突入を容易にする陽動だ」
「ならば一階に催涙弾を撃ち込んだ方が確実でしょうに!」
「それでは人質も足が止まる。それに来年には新庁舎に移転だろう。建物は作り直せても、命は作り直せない」
「しかし・・・!」
「黙れ!」
 一喝。
 それよりもゴーグル越しの静かな気迫が、本部長を閉口させたようだった。
 米部隊が朱煌に了解の意で敬礼。
 それに頷いて見せ、日本の各隊長を見渡す。
「諸君らは我らの突入後、迫撃砲で開いたポイントから突入せよ。全員防弾チョッキ、銃装備。ただし、被害の拡大を防ぐ意味でも無用の戦闘は極力避け、確保したルートに確実に人質を誘導せよ。作戦は十分後に開始する」
 各隊長の敬礼に、朱煌もゆっくりと敬礼を返す。
 その時、例の刑事から定時無線連絡が入っていると報告があった。
 いいタイミングだとほくそ笑む。
 中の人質に迫撃砲着弾と突入を知らせられれば、パニックの少ない理想的な救出作戦を展開できるだろう。
 朱煌は自ら無線機の前に立つと、インカムを口元に引き寄せた。
「私は今作戦の指揮官だ。無分別にテロと対峙せず、情報による援護を是とした貴殿の適切な判断は賞賛に値する。その功績により、突入作戦を決行するに至った」
『・・・おい、なんだ、その横柄な態度は』
 思わずインカムを取り落としそうになる。
「あ・・・、あなただったの?」
 てっきり新藤あたりだろうと思い込んでいた。
「・・・そこに、母さんがいるんだよね。その・・・、元気にしてる?」
『間の抜けたコメントだな。健康面は問題ない。だが全員、一刻も早い救出を望まれる』
「う、うん。十分後に、西側一階に迫撃砲着弾の後、私の率いる部隊が突入します」
『十分後だな、了解した。ただし、お前は来るな』
「え・・・」
『この俺に、目の前で妻が危険に身をさらす姿を黙って見ていろと言うのか』
 心の臓が大きく跳ねた。
 記憶が戻った途端、何も告げずに姿を消した自分を・・・この人は「妻」と呼んでくれるのか・・・。
「閣下、どうなさいました。時間がありません」
 中佐の声に我に返った朱煌は、震える手でインカムを置いた。
「閣下?」
 中佐が怪訝そうにするのも仕方ない。
 けれど、この心地よい涙を無理に止める気にはなれなかった。
 朱煌は頬を伝うそれを拭うと、突入を共にする米部隊を振り返った。
「再度確認する。本作戦の目的は、あくまでも人質無事救出。無用の戦闘は避けよ。ただし、テロリストの抵抗著しき時は、やむを得ず射殺」
 凛とした朱煌の声は兵士の魂に響く・・・とクロスは評する。
 透明感のある旋律のようでいて、かといって猛々しく、兵士たちを高揚させる効果があり、指揮官として不可欠な要素であると。
「諸君、生きて再び会いまみえん。それが叶わぬ時は・・・」
 鞘から抜いた紅蓮を高々と掲げた朱煌の姿に、米兵たちの士気も否応なく高まっていく。
「―――――地獄で会おう・・・!」




 迫撃砲着弾。
 戦端が開いた。
「――――突入!!」
 朱煌率いる米対テロ部隊が、新宿署正面から雪崩れ込む。
 人質の周囲を固めていたダルム派民族同盟たちは、迫撃砲の爆音に気をとられ、突入部隊へ銃口を向けるのが、わずかばかりだが遅れた。
 その隙に米兵の半数が人質の周囲を取り囲むと、各所に配置されていたテロリストらが応援に駆けつけたのを見計らい、朱煌は第二陣の突入命令を下した。
 銃声。
 それに呼応する、人質の悲鳴。
 だが事前の救出作戦通達の効果。
 パニックのあまりの突飛な行動をとる者はおらず、作戦が展開しやすい。
 朱煌は無論の抵抗を見せるダルム派民族同盟に、紅蓮の刃を向けた。
「―――朱煌!!」
 その瞬間の、叱りつけるような声。
 朱煌は苦笑して、紅蓮を構えなおした。
 鮮やかな紅蓮の舞。が、血飛沫はない。
 朱煌は紅蓮の峰をもってして、無血の勝利を重ねていく。
 倒れ伏すテロリストを、米兵が捕縛。
「人質を誘導せよ!」
 第二突入部隊が迫撃砲で口の開いた壁に人質を誘導する。
 チラリとそれを流し見る。
 瞳子を支えるようにして誘導の波に乗る高城が、子供にするようなしかめ面を向けているのに、また苦笑。
 背後の殺気。
 振り返り様、紅蓮の下段からの唸り。
 峰とはいえ、テロリストは首が落とされたような錯覚にかられたと、後に証言する。
 肌に密着する空気から弾道を読み取り、襲いくる弾丸をかわすという、尋常でない業を見せる朱煌。
 紅蓮と、その手首に煌めく薔薇の紋章のブレスレット。
 紅蓮朱雀の象徴。
 彼女のそれを見ただけで、戦意を喪失させる敵すらいるのだ。
 突入からわずか数分。
 新宿署占拠の大事は、無血の幕切れを迎えようとしていたが・・・。
「・・・ガザン共和国、万歳。我らはここに、祖国の礎となる・・・」
 ヨロヨロと立ち上がったテロリストが、手榴弾のピンに手をかけた。
「――――やれやれ・・・」
 朱煌は鞘におさめようとしていた紅蓮を、再び閃かせた。
 彼の腕が、手榴弾を握ったまま宙を舞う。
 自分の肘から下が無くなっていることに男が気付いたのは、眼前の朱煌がいきなり返り血に塗れたのを見てからだった。
「無血ならず・・・か」
 男が声もなく目を剥いて気を失うと、朱煌はベルトに装着した医療キットから、止血用凍結スプレーを取り出して、男の肘に吹きつけた。
 そして、手近で青ざめている警官に、転がっている腕にも吹きかけろと指示。
「縫合すれば元通りになる。すぐ病院に搬送してやれ」
 署内に静けさが訪れると、今度は外の賑やかさが耳に付く。
 報道陣の盛んなフラッシュ。
 興奮気味のリポーターの上擦った中継。
 今度こそ鞘におさめた紅蓮を手に、朱煌がゆっくりと現場を出ると、血に塗れた少年のような戦士に、一斉に報道陣のカメラが向いた。
 仮設対策本部周辺に集められ、救護班の処置を受ける人質。
 そこへ歩を進めると、中尉以下米部隊の敬礼に出迎えられた。
「人質は」
「全員、無傷です」
「そうか・・・。よくやってくれた、感謝する。作戦は成功だ、総員、撤収せよ」
 朱煌がヒラリと手を上げると、米兵は敬礼を残し、次々トラックに乗り込んだ。
 それに続こうとした朱煌の視界に、疲れきった様子でテント脇にうずくまる瞳子の姿。
「閣下?」
「・・・先に、行ってくれ」
 朱煌はまるで吸い寄せられるように、瞳子の元へ歩き出していた。
 母が無事で済んだなら、会わずにおくつもりだった。
 自分の存在は、母の精神的負担でしかないのはわかっていたから。
 だが、この後の自分に待つ運命は、二度と肉眼で母を見る機会を与えまい。
 だから・・・朱煌は瞳子の前に立つ決意をした。




 地面に視線を落としていた瞳子。
 朱煌の軍用ブーツに気付いたか、ふと顔を上げた。
 その返り血に染まる戦闘服に、瞳子の顔が強張る。が、果たして、それが娘の成長した姿とは気付かなかった。
「・・・ご無事で何よりです」
 敬礼。朱煌はあくまで一軍人であることを貫く。
 それが唯一、母と会話できる術であるから・・・。
「あ・・・、ありがとうございました」
 ヨロヨロと立ち上がった瞳子は、衰弱した表情に、精一杯の笑顔を浮かべた。
 ああ・・・母の笑顔。
これが娘と知ってのものであれば、今の幸福感は何倍にも膨れ上がるのに。
「いえ。・・・その、か・・・、マダム」
「はい・・・?」
 駄目だ。
 一文字に口を結ぶ。
 口を開けば、呼んでしまう。
 ――――お母さん・・・と。
 突然、テントの内側から伸びた手が、朱煌を中に引きずり込んだ。
 ゴーグルを取り上げられ、唖然として手の主を見上げると、鬼。
「~~~っきゃあーーーー!!」
「きゃあとは何だ、この馬鹿モン! 来るなと言ったのに、何で来た!」
「だってあたしが指揮官だし~~~!」
「んなもんは大人に任せとけ! 子供がしゃしゃり出てくるんじゃない!」
 鬼は・・・いやいや、高城はまだ関係者が事後処理に追われるテント内で、朱煌を小脇に抱えた。
 この男にこういう体勢を取らされたら、何をされるか答えはひとつ。
「こんなトコじゃいやあーーー!!」
 一応、先刻までここで何者をも威圧するオーラを発し、決めていた自覚あり。
「お仕置きの場所を云々できる立場か! ひん剥かれないだけありがたく思え!」
 久々の対面早々、久々のお仕置き。
 それはもう、これでもかというフルパワー。
「い~~~た~~~いーーーーー!!」
 厚めの生地の戦闘服。
 なのに骨身に沁みる平手。
 しかも連打。
 いやもう、これは痛そうだ。
「心配ばかりかけやがって、このじゃじゃ馬娘! 今日という今日は徹底的に反省の仕方を叩き込んでやるから覚悟しろ!」
「いやあーーー! もういい! 反省したあーーー!」
「もういいだぁ? それは俺が決めることだ!」
 あまりの賑やかさに仕事が手に付かない様子の本部員。
 そんな彼らを一瞥で仕事に戻らせたのは、さすが元警視、新藤である。
「まあまあ、高城さん、落ち着いて。ほら、ここでは皆さんのご迷惑ですし」
 やんわりニッコリ、あくまで紳士。
「どうせやるなら生尻に、こってりたっぷりじっくりと、やっぱり家がベストでしょう」
 一皮剥けば微笑の鬼畜。
 朱煌は握った拳を震わせた・・・・・・が、つい、笑いがもれる。
 子供の時と変わらない態度の二人。
 努めてそうしている風でもなく、これが当然の流れとでもいうように。
 クスクスと、堪えきれない笑い声。
「こら、お仕置き中に笑ってるヤツがあるか」
 ピシャンとお尻を張られたが、脇からは下ろされた。
「だって・・・」
 止まらない。
 なのに、涙もこぼれて、ふと見ると、高城が両手を広げてくれていた。
「~~~~」
 高城を呼んだつもりなのに、声にならない。
 もどかしげに手を伸ばし、高城の上着にしがみつく。
 あやすように高城の手が朱煌の背中を擦った。
 幸せだった。
 戦闘服の返り血が、高城の腕に移ってしまったのを目にするまでは・・・・・・。
 刹那、朱煌は高城の手を振り払い、唇を噛んだ。
 そして、踵を返す。
 テントを出ようとする朱煌の手を掴む。
 振り返った朱煌。
 弾かれるように、高城の首に両の腕を絡ませる。
 思いがけない口づけが、一瞬の隙となる。
 朱煌がその隙を見逃すはずもなく、高城の腕から擦り抜けた。
「朱煌!!」
 テントを出た朱煌は、ハッと顔を撫でた。
 ゴーグルを取り上げられていたのを、失念していた。
「あ・・・」
 立ち尽くす瞳子。
「朱煌・・・ですって?」
 震える声。
 瞳子の目は、娘の顔より、戦闘服の返り血に釘付けになっているようだった。
「・・・母さん、これが、私だよ・・・」
 返り血を掌に撫でつけて、青ざめる瞳子に指し示す。
「これが私の色。もう、決して落ちない色。私は人殺しの悪魔で、母さんは間違ったことなんて何一つ言ってな・・・」
「朱煌!!」
 成り行きを見守っていた高城が、堪りかねたように遮った。
「違うんだ。何もかも、間違ってるんだよ! お前が成すべきことは・・・言うべきことは・・・・・・!」
 朱煌がピクリと空を見上げる。
 近付くプロペラの音。
 それは一機の兵員輸送ヘリであった。
 いささか強引に着陸したそれに、周囲の野次馬や報道陣が、顔をしかめて後退る。
 ヘリからバラバラと降り立ったのは、ラ・ヴィアン・ローズの傭兵達だった。
 彼らはサブマシンガンを手に朱煌を取り囲み、その銃口が向けられると、朱煌は苦笑めいて紅蓮を地面に置き、両手を挙げた。
 最後にゆっくりとヘリから現れたのはアイフェンだった。
 彼は朱煌の前に進み出ると、紅蓮を拾い上げる。
「朱色の柄の紅蓮。左手首の薔薇のブレスレット。貴官はラ・ヴィアン・ローズ総領姫、紅蓮朱雀に間違いないな」
 他人行儀な質問に、朱煌は肩をすくめる。
「ああ、間違いない」
 アイフェンがヒラリと手を上げる。
「確認した。ラ・ヴィアン・ローズ総領姫、紅蓮朱雀中将を逮捕せよ」
 朱煌の両腕が背中に回され、縛が打たれた。
 最期だ。
 これが最期だと、朱煌は呆然とする高城と瞳子を、しっかりと見つめた。
 その死の瞬間に、彼らの姿を鮮明に思い出せるように・・・・・・。





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