盟友【オルガ番外編】

メイド派遣所の罰と躾

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 メイド派遣所への人員要請は予約制である。
 最低一週間前に、必要人数と求めるグレードのオーダーを、手紙か電話で予約。
 指名は不可。
 以前は指名にも応じていたが、その商家の内部に詳しくなって仕事の手を抜くタイミングを覚え、お菓子や料理をつまみ食いしてお喋りに耽ったりする者が現れた経緯があり、同じ商家に集中的に通わせない決まりとなったのだ。



「ぅあ~ん! あ! ひぁ! い、やあぁあ・・・ごめんなさいっ、もうしません! ごめんなさいぃ・・・、ごめんなさいーーー!」
 当然のことながら、当事者にはそれは厳しいお仕置きが与えられた。
「あなた方が気軽な気分でやったことは、立派な窃盗、つまり泥棒ですよ!」
「ふぇ・・ええん。だってぇ・・・お屋敷雇いの使用人は、高価な香辛料を分け合って実家に送ったりぃ・・・。あーーー!」
 お仕置き台にベルトでうつ伏せに括りつけられ、スカートもドロワーズも捲られて剥き出されたお尻にヒュンとケインが唸り、件のメイドは固定ベルトが千切れんばかりに背中を仰け反らせた。
「い・・・痛いよぉ・・・」
 泣きべそを浮かべるメイドの若々しい張り切ったお尻は、ケインの条痕がわからぬ程に全体に赤く染まって腫れていた。
「あれは貴族様屋敷の慣例に倣ってのことと、授業で教えたでしょう!」
 あまり強く振るとお尻に傷がつくケインであるから、きつく打つのは時折であるが、ピシピシと肌を弾き続けられるメイドは、大変な苦痛で泣き顔を歪ませているが。
「日にちの経った香辛料は、家令の判断で使用人への慰労を兼ねて分配される。これは昼夜問わずお屋敷にお仕えする使用人だから受けられる手当で、日雇いの派遣メイドが賜るものではないと!」
「ぅう・・・。でもぉ・・・、でもぉ・・・、余ったお菓子は、どうせ休憩時間に貰えるからぁ・・・ひぃーーー!」
 幾度目かの強めのケインに、腰と太ももをお仕置き台に括られたお尻が身悶えした。
「~~~い、痛いよぉ・・・」
「あなたという子は!」
 ケインを握り締めて歯噛みするのは、先程から彼女にお仕置きを据えていた講師。
 二人の様子を黙ってソファで眺めていた紳士が、講師が怒りに任せて振り上げたケインを見て、ヒラリと手を振った。
「君。ケインを感情的に振るのは、感心しないね」
 口を開いた紳士に、講師はビクリと振り上げた腕を硬直させて、彼を振り返った。
「で、ですけれど、宗主様! この子は先程から・・・!」
「うん。ごめんなさいと言った口で、言い訳ばかり。まるで反省が見られないね。憤る君の気持ちはわかるよ。君が担当講師の教え子だものね」
 宗主と呼ばれる紳士の言葉に、講師の額にドッと汗が滲む。
「気持ちはわかるけれどね。君自身は、血が滲むまでお尻をぶたれれば反省できるものかい?」
「い、いえ・・・!」
「ならば、少し冷静になりたまえ。仕置き台の縛を解いて、その子をこれへ」
 講師は宗主の言葉に従い、メイドを固定していたベルトを解き始めた。
 ふと赤く腫れた丸出しのお尻を見つめ、宗主を振り返ると、彼が静かに頷いたので、ドロワーズもお尻を覆い隠す役割に戻してやる。
 スカート越しに火照るお尻をさすってしゃくり上げているメイドを宗主の前に連れて行くと、彼は物静かな微笑みを浮かべた。
「ね、君。どうしてこんなにきつくお仕置きされたのか、言ってごらん?」
 グスグスと鼻をすすり上げたメイドは、俯いたまま「泥棒」と小さく言った。
「でも、でもぉ・・・泥棒したつもりなんて、なかったんです。だって、お菓子を摘んだだけで、お金や宝石を盗ったんじゃないし・・・」
 宗主は彼女の言葉に頷いた。
「そう。じゃあ、例えば・・・、君がお給金でお菓子を買ったとしよう」
そう言葉を紡ぎ始めた宗主の顔を、メイドは恐る恐る見つめる。
「君がそのお菓子を食べないでいたら、誰かがそれを食べてしまった。食べた相手は、君が一緒に食べようと誘おうと思っていた子。さあ、君はどう思う?」
 宗主にじっと見つめられて、メイドは唇を噛んだ。
「・・・嫌な気持ち・・・」
「どうして? だって、どうせ後で一緒に食べようと誘うつもりだったのだよ? じゃあ、君が誘う前に食べても、誘ってから食べても、同じじゃないのかい?」
 メイドは首を横に振った。
「同じじゃないと、思います」
「そう? では、君がしたことは?」
「~~~誘われる前に、食べちゃった子と、同じ・・・」
「それは?」
「・・・良くない、こと、です」
 宗主はソファに掛けた膝を、軽く叩いて見せた。
「ごめんなさいって思うなら、自分から、ここに来られるね?」
 メイドは深く鼻をすすり上げてからおずおずと宗主の膝の前に進み出ると、さすっていたお尻を顧みてから、そっと両手を離した。
 意を決したように膝の上に預けられた彼女の背中を、宗主は子供をあやすように叩く。
「よくできました。じゃあ、今からおいたのお仕置きに、お尻ぺんぺんだよ?」
 膝の上に腹ばいで泣き出したメイドは、まるきり幼い子供のようだった。
 


 メイドのスカートもドロワーズも改めて捲ったので、わんわんと泣きじゃくっていた。
 自分から膝に体を預けてきたことを鑑みて、ケインで打ち据えられたお尻の腫れ具合を考慮する為だったが、ぶたれる当人はさぞかし怖かっただろうと思う。
 けれど今、宗主の前で慄いて立ち尽くしているのは、講師である。
 ゆったりとソファにもたれて頬杖をつく宗主が、ただ黙って片手のケインをヒラヒラとさせている。
「まあ・・・、此度のメイドの浅慮が君の教育の不行き届きとは、私も思わんよ。本来は、親の躾の範疇だね」
 震えていた講師の瞳が、思いがけない希望の光に瞬いた。
「とは言え、もうその親の手も離れて我々が預かった娘たちだ。親の責任をどうこう問うているより、こちらが前もって道徳をおさらいさせる方が、建設的かな」
「は、はい。私も同感でございます」
「君、他の講師らと相談の上で育成授業のカリキュラムを練り直し、書面に起こしてくれるかね」
「かしこまりました」
「応急処置で指名制を廃したが、失敗したからもうやらぬというのも、嘆かわしい話であるし。いずれ、今回のようなことを憂慮せずに済む人材を育てたいものだ」
「大変素晴らしいお考えだと・・・」
 宗主は鼻白んで講師を見上げた。
「世辞など言っている暇があれば、すべきことをさっさとしたまえ」
「あ、はい! 失礼しました。では、急ぎ講師たちと会議を・・・」
 宗主の前から踵を返した講師は、ケインが鋭く床を打った音に息を飲み、戸惑い気味に彼を振り返った。
「あ、あの・・・」
「誰が退出を許したね?」
「え・・・」
 先程言われた「すべきこと」が、何を差しての言葉かを察した講師の顔が、見るも哀れに歪んでいく。
「で、ですが、宗主様は、あのメイドの浅慮は私の教育に帰するところではないと・・・」
 そう言いながら、彼女の両手はしきりにお尻を擦り始めた。
「ああ、そう言ったよ」
「では、何故・・・!」
 フンと鼻を鳴らした宗主は、億劫げに首を横に振る。
「いい大人相手に、同じことを何度も言わされるのは嫌いなのだがね」
 講師はメイドにケインを振るっていた自分が彼に注意されたことを思い出し、唇を噛んだ。
「・・・わかりました。感情でケインを振るうなと仰せでしたね」
 宗主の前に立ち戻った講師は彼の前に跪いて、彼の利き手側にお尻を向けた。そして、両手でスカートを捲くり上げ、次いで、ドロワーズを引き下ろして剥き出されたお尻を突き出す。
「どうぞ、お仕置きをお願いします」
 自らの手で丸出しとされたお尻を差し出され、宗主は長い吐息と共に天井を仰いで頭を掻いた。
「そんな自棄にまみれたお仕置き願いをされてもねぇ」
「私が悪かったのですから、お仕置きされて当然ですものね」
 お尻は利き手を向き、顔は真っ直ぐ前。
 こちらを見ようともしない彼女の横顔に、宗主はつい笑いを誘われた。
 本当は、どうせ何を言ってもぶつのならぶてばいいという、反省など微塵も感じない小憎らしい態度に、どんなきつい仕置きを与えてやろうかと考えていたのだが・・・。
「拗ねて」
「拗ねてなどおりません。感情的になった私が悪いのです。どうぞ、お気の済むまでお仕置きをなさってください」
 気が変わった。
「子供みたいだよ」
 ケインを床に放った宗主は、教師の腰をすくい上げるようにして引き寄せた。
「納得できない、反省などしてやるものかと思っている大人の女性と、その中の小さな女の子のお尻に言い聞かせなくてはね」
 その言葉通り、幼子のように膝に腹ばいにされた講師は、ピシャンと叩かれたお尻より先に赤くなった顔をねじ向けてきた。
「まずは・・・」
「ひっ! あぁー! あー! くっ・・・うぅ! ひぃ! あー! ああぁー!」
 バチン! バチン!と、大人の女性ならではの熟した双丘に、続け様に手厳しい平手が振り下ろされた。
「ぅうッ! ん! んン! あーーー! いっ、たぁっ、いぃーーー!」
 膝の上で足掻き悶える講師の腰を押さえつけ、宗主は肩まで高々と振り上げた手を容赦なく振るった。
「痛いね。当たり前だよ。ただ力任せに叩いているのだもの。どうだね? 何を考えている?」
「ひぃあぁあああ! いやぁああ! い、いっ、いた、いた・・・っいぃい! あぁー!」
「私はこう言えばいいかな? お仕置きなのだから、痛くて当たり前」
「いやー! い、やー! あー! あー! あー!」
「お仕置きだから。君が悪いのだから。痛くて当たり前の痛いは、こういうもの?」
「いぃ! 痛いーーー! ひぃ! 痛いーーー!」
 ぴたりと止んだ手の平の嵐に、講師はすっかり怯えた泣き顔で、恐る恐る宗主を見上げた。
「私が今、君に言った言葉を復唱してごらん」
 講師はグスグスと鼻をすすり上げ、必死で首を横に振った。
「聞こえ・・・、わかりませ・・・、ごめんなさいぃ・・・」
 すっかり怯えきっている講師の頭を、宗主がポンポンと撫でる。
「謝らなくていい。痛くて何も耳に入らなかったのだろう? そういう風に叩いたのだから、仕方ない」
 再び振り上がった平手にビクリと固く目を閉じた講師は、ジンと一瞬ヒリついたお尻に呻きはしたが、目をぱちくりとさせて見上げてきた。
「いいかね? 確かに、あのメイドはきついケインを振るわれるに相当することをした。言い訳ばかりで反省していなかった。じゃあ、あのまま打ち据えていけば、反省してくれたかな?」
「~~~」
「さて、どうする? このまま、君がしていたことと同じことを続けようか?」
「うぅ・・・、いやぁ・・・」
「じゃ、こうかな?」
 ピシャン! ピシャン!と、再び振り下ろされ始めた平手に、講師は小さく呻いた。
「んっ・・・、んんっ・・・、痛いよぉ・・・、ごめんなさいぃ・・・」
「はい、良い子だ。けれど、今日の君は不貞腐れた子供みたいに悪い子だったからね。うんといっぱいごめんなさいしなきゃね」
「お尻、もうやだぁ・・・。お仕置き、やだよぉ・・・」
 自分の膝の上で、すっかり円熟した尻が駄々をこねて振れている。
 円熟したお尻が、ピシャピシャと叩かれて熟れた果実のように赤い。
 完成された大人の体が、幼い子供のように抗って泣いている。
「えぇーん・・・、ふぇーん・・・、痛いよぉ・・・痛いよぉ・・・、ごめんなさいぃ、もうしません・・・、ごめんなさいぃ・・・」
 自分の膝の上で、大人の女が子供に返っていく。



「ご機嫌だね」
「そうかね?」
「うん。仕置き館立案をしてきた君の姿を、何故だか鮮明に思い出すよ」
 鼻歌交じりの公爵の散歩に付き合っていた盟友の、チクリとした忠告混じりの言葉に、公爵は知らん顔で空を見上げた。
「良い天気だねぇ」
「宗主様!」
 公爵はその声に泡を食って振り返った。
 見れば、派遣所のメイドが数人、こちらに向かって駆け寄ってくるではないか。
「やっぱり宗主様だ! お召し物がいつもと違うから、見間違いかもって思いました!」
「どこかにご招待のお帰りですか?」
「こういうご立派なお召し物も素敵です! まるで貴族様みたい!」
 キャッキャとはしゃぐメイド達に、公爵はすっかり諦めた様子で彼女たちに微笑んだ。
「仕事帰りかね?」
「はい! 今日、勤怠帳にお褒めの言葉を頂きました! 褒めてくださいませね?」
「そ、そう。それは読むのが楽しみだなぁ。じゃあ、気をつけてお帰り」
「はぁい!」
 無邪気に駆けていくメイド達の背を見送っていた公爵は、黙ってそれを眺めていた盟友を振り返った。
「・・・あの・・・、クラ・・・」
「曇り空だけれど、良い天気だねぇ、『宗主様』」
「~~~」
 盟友は肩をすくめて歩き始めると、自分の背中を上目遣いに見つめている公爵を振り返った。
「人気者の宗主様。やり過ぎないが、お約束だよ」





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