シシィの日常

シシィの日常2

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 毎朝の晒し折檻の後、ルイーザがシシィを部屋に呼びつけるのが習慣になった。
 お仕置き確認である。
 あまりぶたれていないようなら、ルイーザが仕上げにお尻をぶつ。
 震えながらお尻を出すシシィのお尻は、大抵真っ赤になっていたので、ルイーザの手を煩わす日は少なかった。
 だが逆に、真っ赤に大きく腫れ上がっている日は多い。
 熱を帯びたお尻の前に屈むと、自分の顔まで熱いものを感じるくらいだ。

――――痛そう・・・。

 痛々しいまでに腫れ上がったお尻に、そろそろこのお仕置きはやめてやろうかという気にもなる。

――――いいえ、いいえ、まだまだよ!

 いきなり現われて、父に優しく微笑まれているシシィが嫌い。
 多忙の身で、半年に一度帰る程度の父。
 せっかく帰ってきても、この前のように、夕食を一緒にするのが精一杯で、翌朝には出発してしまう。
 帰宅した父との貴重な時間を、シシィに邪魔されているようにしか思えない。
 そんな忙しい父が、時間を割いて探していたシシィ。

 ――――こんな子を探す時間があるなら、私といてくださればいいのに・・・!

 シシィと仲良くしなさいと言う父が、ルイーザは不満だった。


 
 晒し折檻は、ロレンス家の名物のようになった。
 毎朝、お尻を丸出しにされた少女が、見物人に代わる代わるお尻を叩かれ泣いている。
 そんな噂がシシィの育った下町まで届くのは、数日もかからなかった。

 ――――ロレンス家といやぁ、シシィのお屋敷じゃないか。

 シシィの隣家の青年、カイルは嫌な予感を感じて、噂を聞いた翌朝に、ロレンス家の門前を訪れてみると・・・。
 案の上だ。
 真っ赤なお尻を晒しものにされていたのは、シシィではないか。

「あの馬鹿。だから行くなと言ったんだ」

 ――――カイル兄ちゃん! 聞いて! あたし、お姫様だったんだよ!

 無邪気に喜ぶボロ服をまとったシシィを思い出して、カイルは苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。

 カイルは反対した。
 下町育ちのシシィが、形式ばった貴族に受け入れられる訳がないのは、どう考えても明らかだった。
 それでも・・・それでもまだ、シシィが幸せになれるならと、迎えにきたロレンス卿に意見してやったのに・・・これだ!
 今この場で助けてやろうかとも思ったが、やめた。

 シシィにも、反省すべき点はある。
 ここは、懲らしめがてら、放っておくとして・・・。

 ――――ピシッ! ピシィン! と、お尻をはたく音とシシィの泣き声を背に、カイルは傍らに控えるメイド頭の前に立った。
「俺はシシィの兄代わり、カイルってモンだ。ロレンス卿とは面識がある。俺は字が書けないんでな、代筆で、手紙を頼みたい。このままじゃ、ロレンス家の姫君に、悪評が立つのは、アンタもわかってるだろう?」
 泣き叫ぶシシィを流しみてから、メイド頭は黙って頷くと、下男に紙とペンを用意させた。


『――――覚えているか、ロレンス卿』

 こう始まったカイルの手紙は辛辣を極め、さすがにメイド頭も冷や汗を拭いながらの代筆だった。

『シシィを幸せにすると、アンタは言ったはずだ。だが、現状は、近隣で評判になるほど、姉姫に苛められているだけじゃないか。ああ、その姉姫を叱る権利は、アンタにゃないよ。二人を放置しているのは、アンタだからな。悪いが、姉姫様を躾け直す権利を貰い受けたい。アンタがそれを認められないなら、俺もこのまま放置する。アンタが了承の返事をよこした時、姉姫にはそれ相応の罰を受けてもらう。アンタ次第だ。返事は待つ。
――――追伸。この代筆は、俺が無理にメイド頭さんに書かせたものだ』

 こう締めくくった手紙には、更に追伸が付いていた。
 メイド頭が個別に綴った手紙。
 それは、ルイーザを止められなかった自分への処分願いと、ロレンス家に来て以来、シシィの身の上に起こっていた事実の報告であった。


 メイド頭に読んで聞かされた返信を、カイルは押し黙って聞いていたが、やがて、静かに立ち上がると、ルイーザの部屋に向かった。
 ロレンス卿は、謝罪と共に、ルイーザへの処置をカイルに一任したのだ。
 いきなり入ってきたカイルに、ルイーザは目を瞬いた。
 下男すら視界に入れたことがなく、男性といえば、父親か同じ貴族の色の白い紳士しか見たことのないルイーザには、初めてみる、浅黒い肌の粗末な身なりの青年に、驚き過ぎて、声も出ない様子だ。

「~~~~きゃあああああ! 誰か! 誰かーーー!」

 やっと出た悲鳴に、カイルは肩をすくめる。

「悪いが、誰も助けには来ないよ、お姫様?」

 訳がわからないルイーザは、その場に固まって動けないようだ。

「・・・さて」

 カイルはメイド頭から聞いていた鏡台を見た。

「これだな。やれやれ、これで叩くのか? ひどい話だ」

 鏡台の傍らには、ルイーザが今までシシィの折檻に使ってきた道具が並んでいたのだ。

「はじめまして、ルイーザ姫。俺はカイル。お父上・ロレンス卿の名代で、アンタのおいたをお仕置きにきた」

 ルイーザの顔色が、違う意味で変わった。
「お父上」と「おいた」の言葉が、脳裏で符号したようだ。

「思ったより、いい子だね。自分のおいたは自覚できてたか」
「――――な、なによ! どうしてお前なんかが、お父様の名代を語るの!?」
「お父様の手紙、見なきゃ納得いかないかい?」

 堂々としたカイルの言葉が、嘘でないことに気付いたのか、ルイーザは泣きそうに唇をかみしめた。
 その表情は、父親が自分を叱るのに名代を立てたということの方に傷ついているようだ。

「・・・そうだよな、アンタだって、寂しいんだよな」

 思いがけずブロンドの髪をクシャクシャと撫でられて、ルイーザは顔を真っ赤にして後ずさった。

「あ・・・無礼者!」
「無礼はこれからでしょ、お姫様?」

 カイルはルイーザの背中を軽く押すと、いともあっさりベッドに腹這いにさせた。

「や・・・、いや・・・!」

 ルイーザは寝間着の裾を強く足で挟み込んだ。

「おや、わかってるようだね、自分の運命が。その通り。アンタがシシィにしてきたことを、その身で味わってもらうんだよ」
「いやーーー!」
「シシィも、そう言っただろ? それをアンタは、「口答え」と言って、お仕置きを追加したって?」
「――――あ・・・、あ・・・!」
「そう、ご想像通り。すべて再現させてもらう」

 再現。
 それがどんなものか、自分で課してきたルイーザは、震える瞳で腹這いに押さえつけられたままカイルを見上げた。

「アンタはシシィに、自分でお尻を捲くらせてたそうだが?」
「ぃ、いやーーー! いやーーー!」
「無理か」

 ルイーザが必至の抵抗で押さえる寝間着の裾を、あっさりめくったカイルは、鏡台から持ってきた道具を眺めてため息をついた。

「平手主義なんだがなぁ・・・、仕方ないか」

 丸出しになった白いお尻に、手にしたパドルを当てる。

「こんなもので、百叩きを当たり前にしてたって? アンタ、これでぶたれたこと、あるのかい?」
「あるわけないでしょう!?」
「そりゃぁ、悪い子だ」

――――パァーーーン!!

「ッああぁーーー!!」

 真っ白いお尻が、いとも簡単に赤くなって、少々心が痛む。

「痛いだろう? 俺もシシィも、小さい頃にこれでぶたれて泣いたもんさ。その痛みを知ってるから、加減もできる。アンタは? 加減したかい? お姫様」
「し、したわよ!」
「嘘つきは、うんときついお仕置きだな」
「や、やめ・・・痛いーーー!!」

――――パーーーン! パーーーン! と、繰り返されるパドルに、ルイーザのお尻は左右上下に逃げ惑う、が、カイルの大きな手で腰を押さえつけられ、どんどん赤く染まっていく。

「痛いーーー! 痛いーーー! やめてーーー!」
「アンタがシシィにそう言われてやめたなら、これで終わるよ?」
「やめ・・・!」

――――やめてない。もっと厳しくした。

 泣き喚いて許しを乞うシシィを、「口答え」と評して。

「口答えは、お仕置き追加だそうだね?」
「・・・ひ」

 パドルを構えなおしたカイルに、ルイーザは恐怖で涙があふれ出した。

「そうそう。これで終わらないんだったな。反省して? 自分から? 素直にケインのお仕置きにお尻を出せるまで、パドルでぶつんだったっけ?」
「ひぃーーー! いやーーー! 許して! 許して! ケインなんか無理―――!」
「シシィならケインは大丈夫なのか?」
「だ、だって・・・!」
「口答え、だな?」
「あ・・・! 違っ・・・!」
「違う? それも口答え」

 お尻に降り注ぐパドルに、ルイーザは泣き叫んだ。
 シシィのお尻をぶった。何を言っても、許しを乞うて泣き喚いても、「口答え」で片づけて、お仕置きを長引かせた。
 それが今、我が身に・・・自分のお尻に返ってきている。

「お前はシシィに言ったそうだね? 『お前に許されている言葉は・・・』なんだっけ?」
「~~~ごめんなさいーーー! ごめんなさいーーー!」

 火がついたようなお尻の痛さに、プライドはけし飛ぶ。
 時折、自分がシシィにはしなかった「お仕置きの間」があった。
 その時、ヒリヒリとするお尻に思うのだ。
 シシィは、ずっとこんな思いを・・・。
 痛々しいお尻が可哀想に思えたことも、何度かあった。
 だから、自分で叩きたくなくなって、外に放り出した。

「あ・・・」

 まさか・・・。
 まさか、自分がシシィにしたように、門扉に、お尻を晒して立たされる・・・? そして、誰ともわからぬ通行人に、シシィと同じように、叩かれ・・・・・・。

「ぃ、い、いやあああああ!!!」

 急に暴れだしたルイーザが、何を思ったか、わからないカイルではない。
 パーーーン!と、きつめにパドルを振った。

「ぅあーーーん!!」
「それをされるかどうかは、お姫様の改心次第だな。反省したなら、シシィがしていたように、素直にケインにお尻を出しなさい」

 想像しただけで恐ろしいケインに、自分からお尻を差し出すなんて・・・!

「でき・・・!」
「できない? シシィにはさせて?」

 涙でくしゃくしゃになった顔をカイルに向けると、彼は困ったように頭を掻いた。

 当たり前だ。
 こんな酷い折檻を、カイルはしたことがない。
 白くて小さかったお尻が、真っ赤に腫れ上がり、倍ほどに膨らんでいる。
 可哀想で、ここで終わらせたい気持ちが、上回っている。が、カイルは鉄面皮を貫いた。

「じゃあ、ケインは明日にしようか? アンタがシシィにしていたように、毎日、お仕置きに来よう。アンタは、お尻を出して、俺のお仕置きを待ってなさい」
「や、そんなの、いやあぁ・・・」

 もちろん、毎日通えるほど、カイルとて暇ではない。
「じゃ、今この場で、自分がしてきたことを、清算しておきなさい」
「ぅ、う・・・うぇーーーーん!!!」

 子供のように泣きじゃくるルイーザを壁に向かって立たせ、カイルはケインを手にした。

――――相手の痛みを知らないってなぁ、怖いねぇ・・・。

 ロレンス卿の手紙によれば、忙しさにかまけて構ってやれなかった分、甘やかして育てたとあった。
 叱ったこともなければ、お仕置きにお尻を叩くなど、したこともなかったと。
 平手のお尻叩きすら知らない子が、パドルやケインを振り回していたのだから、シシィも、さぞや痛い思いをしただろう。
 すでに真っ赤になったお尻にケインを向けるのは、経験者のカイルでも勇気がいった。

――――ビシッ!

「ぅあーーーん!」

 しゃがみ込む。お尻を引く。手で庇う。逃げ出す。
 とてもじゃないが、じっとなどしていられないらしいルイーザの腕を、カイルは(精一杯加減した)百叩きまで、無情に掴んで離さなかった。

「痛いーーー! 痛いーーー!」
「お前がしてきたことだ! 思い知って、反省しなさい!」
「だってーーー! わーーーん! 痛いーーー! だってーーー!」

――――やれやれ・・・。自分で「だって」を「口答え」と評していたくせに・・・。

「それじゃあ終われないでしょう! じゃない、終わらないぞ!」

 ぽんぽんに腫れ上がったお尻を叩き続けるのは、さすがにもう、こちらが「ごめんなさい」だ。

「ぅ! あー! ごめんなさいーーー! ごめんなさいーーー!」

 ケインが床に置かれ、やっと許されたとへたりこんだルイーザだったが、お尻が床についた途端、飛び上がった。

「痛いーーー!」

 膝立ちでお尻を押さえてわんわん泣くルイーザに苦笑。

「当たり前だろ? うんとお仕置きされたんだから」

 そっと抱き寄せて、ブロンドの巻き毛に指を絡める。

「痛かったな。可哀想に・・・。もう、あんなこと、するんじゃないよ?」
「し、ない・・・! しない!」
「シシィに、謝れる?」

 涙でくしゃくしゃの顔が、強張ったようにカイルを見る。

「だって~~~!!」
「はいはい。悔しかったんだろ? シシィに、お父様を盗られたみたいで」

 幼子のように必死で頷くルイーザが、なんとも愛おしい。

「でーも、苛めちゃダメ。お父様、悲しむよ?」
「――――! だって・・・」
「はいはい。わかってたんだよね? だから、隠れて苛めてたんだよね?」

 また、必死の頷き。
 ぽんぽんと、頭を撫でる。

「で~も、それはダーメ。悪い子がすることだよ? お姫様は・・・」
「ルイーザ!」
「はいはい。ルイーザ様は、寂しかっただけでしょ?」
「だって・・・!」
「だっては、お尻だぞ?」

 慌てて両手でお尻を覆ったルイーザは、拗ねたような上目遣いをカイルに向けた。



 メイド頭に連れてこられ、カイルを見たシシィは、子供のようにわんわん泣き始めた。

「カイル兄ちゃん~~~!!」

 さっきまで、日常となった朝の晒し折檻でお尻をぶたれ、あんなに泣き叫んだのに、まだこんなに涙が出るとは、自分でも驚くほど、大粒の涙をぼろぼろこぼして。

「待ってた・・・、助けにきてくれるの、待ってたよぉ~」

 抱きついてきたシシィに、カイルは苦笑して頭をかいた。

「お前は、いつも待ってるだけだねぇ」
「・・・え?」
「いや、それは後だ。――――おいで」

 その呼びかけが、ドアの向こうに向いているのに首を傾げたシシィは、おずおずと入ってきたルイーザにビクリとしたが、彼女の伏し目がちな様子に、いつもと違うものを感じる。

「さあ、ルイーザ姫? シシィに言うことがあるでしょう?」

 恨めしげにカイルを見上げるルイーザに、彼は顔をしかめてみせる。
 だが、もともと堆いプライドと共に育った生粋のお姫様には、今までずっと下女扱いしてきた妹に、謝るという芸当は、非常に高度なことらしい。

「ルイーザ姫? お約束したから終わったんでしょう。お約束を守れない子は、どうなるんでしたっけ?」

 ビクンとお尻を庇ったルイーザは、泣きそうな声で「だって・・・」と言った。

「悪い子だ。いい子になれるまで、そこに立ってなさい」

 壁を指さされ、ルイーザはすっかりふくれ面でツンとそっぽを向いてしまった。

「やれやれ、そういう子は・・・」

 部屋着のスカートを脱がされてしまい、ルイーザは悲鳴を上げる。

「もうお尻はいやあーーー!」
「じゃ、言う通りになさい」

 引きずられるように連れていかれたルイーザは、壁を向いて立たされ、ペチコートを膝まで引き下ろされてしまった。

「いやあ!」
「手は壁!」

 カイルの声に、つい反応して壁に両手をついてしまったルイーザは、悔しそうに口を歪める。

 驚いたのはシシィだ。
 丸出しにされたルイーザのお尻は、自分と同じように真っ赤になっていたのだから。
 けれど、カイルに逆らえないでいるルイーザの様子に、すぐ自体は把握した。
 あのルイーザの様子では、きっともう、苛められることはないだろう。
 ホッとして、カイルに抱きつこうとしたシシィは、彼の険しい顔に目を瞬いた。

「カイル兄ちゃん・・・?」
「どうして、そうなんだ、お前は」
「え?」
「お前は、いつだって、誰かに・何かに、何とかしてもらおうと待ってるだけだ。いつかどこかの誰かが、救ってくれるってな。自分で何とかしようとしなきゃ、何も変わらないぞ!」
「だ、だって・・・」
「貧乏暮らしに嘆いてたね。いつか誰かに、ここから救い出してほしいって。そうじゃないだろう」
「で、でも・・・」
「ロレンス卿のお迎えに、考えなしに飛びついて、仕事場の都合も聞かず、さっさと辞めて出て行っちまって」
「だ、だって・・・」
「それで? こっちで夢に描いた暮らしができなかったから、今度はここから助けてくれる誰かを待つ? いい加減にしなさい」
「だって・・・!」
「逃げ出そうと思えば、いつでもできただろう! お前が待ってる白馬の王子様だって、歩ける足で歩こうとしない子の所には、来てくれないぞ!」

 てっきり優しく慰めてもらえると思っていたシシィは、手厳しいカイルの言葉に、ふてくされてうつむいた。

「俺はずっとお前にそう教えてきただろ? まず自分で何とかすることを考えなさいって」
「だって・・・」
「まだわからないのか! そういう子は・・・!」

 シシィの腰を抱え上げ、お尻をひっぱたいてやろうとしたが、彼女が朝のお仕置きの後であることを思い出し、思い直す。

「お前も、姫さんと一緒に立ってなさい」
「そんなー!」
「それとも、腫れたお尻を叩かれるか?」

 ビクリとしたシシィが渋々ルイーザの隣に並ぶと、カイルは彼女のスカートを取り上げ、下着も下ろしてしまった。

「さあ、これでおあいこだ!」

 赤いお尻を並べて、シシィとルイーザはふくれ面でカイルを見ている。
 カイルもかなり厳しく叩いたつもりだが、さすがに、面白がられて何人にもぶたれたシシィのお尻の方が、圧倒的にまんべんなく腫れている。

 かといって、ルイーザのお仕置きが足りないと追加するようなカイルではないので、しばし、そのまま立たせることで、お仕置きとすることにした。

 シシィはともかく、長時間じっと立っていることに慣れていないルイーザは、時折もじもじと動いて、カイルの叱責を買う。
 カイルに叱られるルイーザを見て、シシィが笑うと、ルイーザはシシィをにらんで「何よ!」と小声で囁いた。

「カイルが怖いんですか?」
「怖くなんか・・・!」

 カイルの咳払いで、ルイーザとシシィは弾かれるように姿勢を正す。

「やっぱり怖いんだ」
「うるさいわね! 何よ、その態度! そういう子は、後でうんと・・・」
「またカイルにお仕置きされますよ」

 真っ赤になって言葉に詰まっているルイーザを、シシィが笑った。

「お姫さん方、いい加減にしなさい」

 いつの間にか背後に立っていたカイルが、二人のお尻を同時にパーン!とひっぱたくと、ルイーザとシシィは飛び上がって痛むお尻を押さえた。
 

 ロレンス家の名物になっていた朝のお仕置きは、翌日からなくなった。

 シシィは、時々まだ意地悪な姉姫に、「カイルに言いつけます」と言い返す。
 悔しそうに頬を赤らめて黙りこむ彼女が面白くてからかうと、ルイーザは今度は本気で怒りだし、姉妹ケンカが始まる。

 それが、最近のシシィの日常。

 それを、使用人伝いに聞いたカイルが時折やってきて、二人はまた仲良く真っ赤なお尻を並べて立たされる。
 それが、シシィとルイーザの日常になった。


おわり

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